じんぐるべーる じんぐるべーる くりすーますー
 適当なメロディーと共にリズム感の全くない歌声が無機質な音色を奏でている。自分でも歌っていて虚しくなる。
 そう今日は泣く子も黙る、クリスマス……ではなくその前日クリスマスイブだ。一般的に日本では当日よりイブの方が盛り上がる。お祭り大好き気質の日本人らしいと言えばらしいと思う。
 今年最後の大きいイベントと言っても良いクリスマスに俺は、1人寂しくこうして部屋の中でごろごろしているわけだ。サンタもこんな俺にプレゼントなんか与えに来ないだろう。
 クリスマスというイベントにはある側面がある。恋人同士でイチャイチャするという独り身にとっては拷問みたいなイベントだということだ。部屋を飛び出 し、繁華街にでも足を運べば、そこにはどこにも幸せそうにイチャイチャしやがるカップルの群れ。クリスマスのイルミネーションの色とりどりさがピンク一色 に見えてしまって、本当に憂鬱になる。
 誰が揶揄したか性なる夜――性夜。彼女1人いない独り身には辛すぎるこの日はガキでもない俺にはとてつもなく苦痛だったのだ。
 こういう日には寝て過ごすのが一番だと、一抹の虚しさを覚えつつ、それを気持ちの中から抹殺して俺は思う。
「はぁ……、つまらん……」
 聖夜に奇跡が起きるものなら起こしてみろと思いながら、ベッドに横になりながら吐き出されたため息は白い煙となって薄暗い天井に向かって昇っていく。
「何や不景気なツラして……。せっかくのクリスマスやのに楽しまんのか?」
 仰向けになった俺に背中越しから酷く冷たげに聞こえる声が掛けられる。呆れと驚きが混じったような口調にうんざりとする。
「知るかよ。だいたい、クリスマスはキリスト教とかあっち方面の風習だろ? 何で東洋の国、日本でやるんだよ」
 そう返して、俺はふと気がついた。この部屋にいるのは俺の1人。鍵を持っているのは実家で暮らしている両親くらいで、当然彼女もいないし、他人に鍵なんか渡したことはない。
 だからこの部屋に人がいる、なんて事態は俺が自発的に招かない限り、あり得ないのだ。
 では何故? 俺は若干の恐怖を覚えつつもゆっくりと振り返り、寝ぼけ眼をはっきりと見開いた。
「あに? そないにうちが珍しい? まぁ、そらそうか。こんな格好で来たらびびるわな」
 ケラケラと快活そうに笑うその人物は浮いていた。いや、雰囲気的な意味ではない。本当に浮いていたのだ、空中に。しかも女だった。よくわからないけど。
「………………格好だけじゃなくてアンタの存在全てが俺にとっては謎なんだが」
 唖然とする俺が言えたのはこれだけだった。
「んじゃ、うちが来た理由を教えるか」
 女はにやりと目をネコのように細め、口の端から舌を出し、ぺろりと自分の唇をなめる。
「アンタを……殺しに来た」





クリスマスに死神(あいつ)がやってくる





「あのー、意味わからないんですけど。もしかして電波、アンタ?」
 あまりにあり得ない事態に俺は返って落ち着いてツッコミを入れてしまった。
「おい、ここ日本やろ? Japanやろ? 黄金の国・ジパングやろ? 日本語わからんのか?」
「日本語は難しい。特に文脈から判断することの多い言語だから筋道が通っていないと、さっぱりわからん」
「つまり……何が言いたいん?」
「要するに、だ。説明をしろ、説明を!」
 ここまで言い切って俺はまだ鉛のように重い体を持ち上げて、居住まいを正す。目の前に浮かんでいる女はなるほどと拳をぽんと掌に叩いて納得した表情を浮かべる。
「だからアンタを殺しに来たんやって」
「また要領を得ないことを……」
 また意味不明なことを言おうとする女を制そうとして、
「うちは死神やからな」
 その言葉はあっけなく女から告げられたフレーズに遮られてしまう。
「はぁ? 死神? 何だそれは……」
「だから死神やって。アンタ知らんのか? 鎌持って、髑髏の姿で描かれるあれや!」
 相変わらず状況を理解できない俺にしびれを切らしたのか、少しむすっとした様子で女は早口でまくし立てる。
「え? まさか本当に、本物の死神、だ、と……」
「ああそうや」
 唖然として驚愕の事実に、いやまだ事実とはわからないからあくまでも本人談だが、俺は驚きを通り越して、呆然と宙に浮く女を眺めることしかできなかった。
「アンタ、どないしたん? 急にメドゥーサに睨まれたように固まっちゃって」
 身じろぎ一つしない俺を見て、不審に思ったのだろう。ぱっちりとした目を開いてこちらを一瞥してくる。
「死神ってことはまさか……」
「ああ、そうや。アンタを殺す予定や」
 まるであっさり遊びに来たよ感覚で言ってのける死神。その軽薄さが何とも言い難く、俺はまだメドゥーサに睨まれた状態だった。
「とは言っても、すぐに殺すわけやない。アンタを殺すべきか、そうでないかを判断せなアカンからな」
 未だに浮きっぱなしで軽い口調のまま続ける死神はめんどくさそうにふぁあと呑気な欠伸を立てると、そのままの姿勢で近くに置いてあるクッションの上にちょこんと着地する。
「で、判断すると言ったが、具体的に何をするんだよ」
 ベッドに腰を掛けたまま、俺はクッションから離れてコタツに潜り込み、みかんを勝手に剥こうとする死神の姿を一瞥する。
「んー、特に決まったことはないでー。生殺与奪を握ってるのはうちの判断だけや。こっちが勝手に判断するから気にしんとき」
「そんないい加減な」
 この蜜柑酸っぱいーとか勝手なことを抜かしながら、死神は人好きのする笑みを浮かべ、けらけらと笑い声を上げる。
「ところで、アンタ」
「ん? どうかしたか」
 不意に笑い声が止んだかと思うと、意地悪そうな、いたずらを考えている表情で死神が問うてくる。
「アンタ、彼女いるん?」
 予想できた一撃だった。しかし予想して構えてもそれを上回る攻撃を食らってしまっては一溜まりもない。俺の心の急所を直撃したその一言は、鋭利なナイフ、いや、電動チェーンソーの如く急所を丸ごとえぐり取っていく。
「あらま、愚問だったな」
「お前、わざとやってるだろ……」
 せっかく忘れようとしていたのに……と小言を叩きながら、俺はベッドから立ち上がり、はぁあっと大きく一つため息をつく。
「ははっ、堪忍や」
「あのなぁ……」
 笑いを止められない死神を俺は冷ややかな視線で睨み付ける。だが、そんな俺の視線には全く関心を示さず、ほんの一瞬、死神は表情に影を落とし、
「ま、うちもアンタと同じや」
「へ?」
 そんなことを口にした。先程までのおちゃらけた感じはそこになく、あるのは生身の人間そのものの愁いを帯びた表情。
「耐えられんかったんや。幸せそうな雰囲気にな」
「どういうことだ?」
 コタツの上に置かれている蜜柑を無造作につかみ取り、俺は皮をむき始めながら問う。
「ケーキ屋にとってクリスマスがかき入れ時であるのと同じで、死神がこの年末が一番忙しいんよ。ま、理由は想像にお任せするわ」
「揶揄すれば、性夜ってところか」
 蜜柑の酸っぱさに顔をしかめながら、俺は淡々と相づちを打つ。
「ま、そんなところや。ともかく、死神にもルールがあって、この人間は殺すとかそういうのはあらかじめ決まっていたりする訳や。まぁ、これは一例やけど」
「んでそのルールに?」
「宿る生命が多いほど、死を迎える生命が多いってのがあるんや」
 死神の話を聞いていると状況が読めてきた。何となく嫌な予感しかしないが。
「つまりクリスマス付近で人を何人も殺さないといけない訳か」
「ご明察、や」
 一通りしゃべり終わった死神は、どこからともなく暖かいゆずレモンのペットボトルを取り出し、口を付けて一息つく。どこからそれ出てきたんだと訊ねると、秘密だと返され、俺はとりつく島はないと判断する。
「で、話の続きだ」
「さっきも言ったとおり、幸せムードに耐えられなかったんや。アンタと一緒でな」
 余計なお世話だと死神の言葉の一部を切り捨てながら、俺は思案を巡らす。目の前にいる女は死神といえど、とても人間みたいに見える。というかここまで来ると人間そっくりだと思う。
「ま、アンタの所に来たのはそんなオーラの中、不幸オーラが漂っていたから。ノルマのこともあるし、寄らせて貰ったわ」
「余計なお世話だ……」
 ノルマ、という言葉を聞いて俺の背中を冷たい雫がつぅっと流れ落ちていく。
「で、俺を殺すのか?」
「…………どうしよっか? アンタが決める?」
 まるでケーキ屋の前でどのケーキを選ぶか迷っていて、選んで欲しいと言わんばかりの調子に俺は呆れを通り越して、笑いがこみ上げてきた。
「何やねん、いきなり」
 不意に笑い出した俺を見て、死神は怪訝な表情を浮かべる。それがまた可笑しくて俺の笑いは更に激しさを増していった。
「あー、もう。何や、頭おかしなったんか」
 ぷりぷりと頬を膨らませ、顔をしかめる死神の戸惑いはまだ続いているようだ。俺は何とか笑いを堪えながら、死神の目を見据える。
「いや、まさかそんなことを言うとは思えなかったんだよ」
「どういうこと?」
 まだ訳がわからないといった感じの死神の様子は端から見ると凄く滑稽だった。
「あのな、決めろって言われたら絶対殺せとは言わないだろ、自殺志望者でもない限り」
「あ、それもそうやな」
 それは思いつかなかったわと呑気に笑いはじめた死神の姿をぼんやり眺めながら、何故か少しほっとして俺はふぅっと小さくため息をついた。少し開いたカーテンから見える窓越しには、白く儚い空からの少し早いクリスマスプレゼントがはらりと舞い落ちていた。









「さてと、どうする?」
 俺は居住まいを正して死神に問う。今までずっと笑い声を上げていた死神は我に返って、こちらを見て慌てて居住まいを正した。
「ん、何をや?」
「お前、腹減っているか? どうせ、お前も暇だろうし、ぱぁっとやらないか?」
 適当に散らばっていた広告を手元にたぐり寄せ、コタツの上に無造作に置く。広告には寿司やらオードブルのパーティセットやらピザなどがあった。全て宅配サービスによるものだ。
「お、ええねぇ。ぱぁっとやろか」
 もちろんアンタのおごりなと続けざまに一撃を見舞われるが、この際気にしないことにする。そういえば朝から何も食べていなかったなと思いだし、この際だと多めに携帯片手に注文を立て続けに続ける。
 程なくして注文した品が宅配サービスによって次々とやってきた。寿司、オードブル、ピザ、そしてお酒。端から見ればささやかなパーティといった風体だろうが、実態はただのやけ食いに等しい。
 死神は我が物顔でいろいろな食べ物を自分の取り皿へとかっさらっていき、欠食児童の如く猛烈な勢いで胃の中へと収めていく。
「お前、どんだけ食うんだよ……」
 中ば呆れを通り越して、感心するほど食っている死神の表情は晴れ晴れとしたものだ。唇の端にケチャップが付いているのはご愛敬と言ったところか。
「だってー、あのバカップル共めっちゃ腹立つんやで。やってられんわ」
 安い缶チューハイを一気に煽って、死神は先程までの出来事を猛烈な勢いで話し始める。公衆の面前で自分たちだけの世界に入っているカップルの常識のない 話から果ては俺のような人間に言って良いのかわからない死神の私生活、主に鬱陶しい上司のことなど、を延々とのべつまくなくべらべらとしゃべり続ける。
「おいおい、いい加減にしとけよ……」
「べーん、ええやん〜。今日はぶれいこーやー!」
 完全に酔っぱらってしまっている死神はまるでオブジェを作れるんじゃないかと思うほど、空き缶を積み上げている。ここまで来ると怒鳴る気にもならず、なし崩し的に俺はぼんやりと諦観するしかなかった。
「アンタもどんどん飲めー」
「はいはい、わかったよ」
 頬を上気させ、無理矢理ビールを押しつけてくる死神の姿に一瞬びくりと身を震わせて、俺はため息一つ、一気にビールを煽る。
「これで良いか。それとももっと飲まなきゃダメか?」
 次の酒に手を伸ばしながら、死神に問う。死神はにたぁっと品のない笑みを浮かべ、大きく頷く。それを見て俺は心の中でこいつは……と思いながら、冷え切った缶の縁に口を付ける。
「ええ飲みっぷりやー」
「全く……職務中にこんなことしてていいのかよ……」
 苦笑いを浮かべながら、死神と過ごすお世辞にパーティと呼べない代物を楽しんでいる自分を可笑しく思う。だが、それでも死神といると不思議と気分が落ち着く。騒がしすぎるこいつが普通の、等身大の人間にしか見えなくなっている。
 だからこそ、更けていく夜の帳と死神の喧噪を聞き流しながら、俺は少しでもこのあり得ない時間が長く続くように、心の底から願うのだった。





「なあ」
 不意に死神の落ち着いた声が部屋の中に響き渡る。ほろ酔い気分が吹き飛び、現実感が急速に戻ってくる。
「どうしたんだよ」
「今日はありがとうな。アンタ、めっちゃ楽しかったわ」
 ケラケラとあったときと同じ笑みを浮かべ、死神はいつの間にか浮かんでいた。
「いきなり何だよ」
 酷く落ち着いた声、自分の声じゃないほど低くて、耳から聞こえてくる声に戦慄を覚える。
「そろそろシンデレラは退散といかなアカンねん」
「ようするに、帰るってことか……」
 ご明察、と推理小説の犯人のような口調で続ける死神の表情には先程以上にどこか影があるように見えて仕方ない。だが、俺にはそうかと気のない返事をすることぐらいしか出来なかった。
「本当ありがとな。ほんまは殺さなアカンねんけど、飯を奢って貰ったし、特別に見逃したる」
「当たり前だ。どんだけ食べたと思っているんだ……」
 肩をすくめ、両手を広げる俺の仕草にくすりと死神は笑みを浮かべ、そしてこう呟いた。
「結局、うちらにはクリスマスプレゼントは無し、か……」
「…………」
 その寂しげな横顔はクリスマスの日にサンタからプレゼントの来なかった子供のようで、何故か俺の心を酷くえぐり取っていった。だけど、何も言うことは出来ない、いや、出来なかった。
 無言のままのしばしの時間が流れる。まもなく日付が変わろうとしている。イブが終われば、こいつは行ってしまうのだろう。
「なぁ……」
 ようやく口を開いた俺は、何を言おうと迷って逡巡する。
「……ん? あ、メリークリスマス」
 その瞬間、日付の変更を告げる安い腕時計のアラームが鳴り響く。すっと浮き上がった死神はふっと口の端に笑みを浮かべると、俺を一瞥し、そのまま姿をぼんやりとくらませた。
「ははっ…………」
 苦笑いが口元を駆け抜けていく。死神は消えた。クリスマスプレゼントを渡すどころか、自分で勝手に持ち去っていった。
「馬鹿な奴、だよな」
 ぐちゃぐちゃに散らかった机の上の惨状を目の当たりにしても、ため息しか出てこない。あいつらしい、そう思えた。
「さてと、片付けますか」
 俺は静かに腰を上げ、ゆっくりと机に向かって動き始めた。窓の外は相変わらず雪が舞っており、電灯に照らされた白い結晶と夜の帳のコントラストがクリスマスイルミネーションのように光り輝いて見えた。





 行く年来る年、今年も後数時間で終わりと思うと、少し感慨深く思う。今年一年も色々な出来事があった。走馬燈のように良くも悪くも心に残っている出来事が次々と頭の中に浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返す。
 そして1週間前、俺は不思議な体験をした。どこか抜けていて、やたらと人間くさい死神が俺の前に現れて、勝手にやけ食いしていった。ただそれだけだっ た。なのに、あいつはどこで覚えたかわからない流暢な関西弁とマシンガンのような怒濤のしゃべりで俺を圧倒して、そして目の前から消えていった。
 似たもの同士の傷の舐めあいなのかも知れない。ただ親近感を覚えただけなのかも知れない。それでもシンパシーした。勘という当てにならないが確かな物を俺は信じることにする。
 そのうちあいつはまたひょっこりと顔を出すに違いないと……。
 今流行のアイドルの薄っぺらい曲を耳で聞き流しながら、年越しのソバを啜る。もう11時を越えたのかと時計の針を確認して、思う。台所には1人分ではなく2人分のおせち料理が並んでいる。あいつが腹を減らしてやってきて困らないように。
 刻は刻一刻と進んでいく。紅組と白組、どっちが勝ったとか眺めている間にもう年越しのカウントダウンだ。
 5、4、3、2、1、
「あけおめー」
 呑気な声があの時と同じく頭上から響いてきた。あきれ顔で天井を見上げると、懐かしい、いやもう見慣れたその顔がそこにあった。
「今年も、いや、今年からよろしくやでー」
「バカ。そっちは俺のいる方向じゃない。後、スカートの中丸見えだ」
 こめかみを押さえながら、俺はコタツから出て、立ち上がる。ゆっくりと着地したあいつは死神らしい笑顔を浮かべて、こう言った。
「アンタを殺すか殺さないか見極めに来たわ」
「はいはい、遅すぎるクリスマスプレゼントだな。サプライズにしては質が悪いぞ」
 ダウンジャケットを手に取り、腕を通しながら俺はふっと笑みを浮かべる。それにあいつもあいつらしい笑みで返してくる。
「どうせ、暇なんだろ。初詣、行こうぜ」
「何で死神のうちが、わざわざ神社行かなアカンねん……」
 ジト目でこちらを見てくるあいつに俺は必殺の言葉を投げかける。
「いやー、神社にはいっぱい夜店があるんだろうな。たこ焼き、焼きそば、フランクフルト、ポップコーン、綿飴、りんごあめ、射的、金魚すくい……。腹も一杯になるんだろうけど」
「行く!」
 即答だった。聞くまでもなかった。目がきらきら犬のように輝いている様を見ると、何故かワクワクしてくる。
「さ、行くで」
 俺の手をさっと掴み、あいつはずんずんと前に進もうとする。
「んで、お前は何をしているんだ……」
「バカップルのマネに決まっているやん」
 俺の腕にわざと絡みつきながら、あいつはいつものいたずら小僧のような顔をする。
「全く、死神がこんなので良いのかよ……」
 ため息を吐こうとして、止めた。新年早々、辛気くさいのはなしだ。来る年には笑顔で迎えを出さないと行けない。あいつのように。
「はよ、行かな、食べ物なくなるー」
「そ、そんなに急がなくてもなくならねぇよ!」
 駆け出そうとするあいつの横顔を一瞥して、俺は新年の喧噪へとゆっくりと足を運ぶのだった。





 ――クリスマスプレゼントはお年玉となって隣にいる――




fin

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